NoName

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♯青い青い


 私の職場にはひとりぼっちの人がいる。
 だれも声をかけない、だれも耳を貸さない、だれも手を差し伸べない――そんな可哀想なひと。
 昔の私なら彼女の声に応えていたかもしれない。
 彼女の言葉に耳を傾けていたかもしれない。
 彼女の手を引いて、『そこ』から連れ出していたかもしれない。
 けど、今の私はあえて何もしない。
 私にとっての理想と正義は、所詮私をひとりぼっちにするものでしかなかった。
 
 あの頃の私は、とてもとても青かったのだ。

5/4/2025, 12:39:12 AM