第二十六話 その妃、頼りの綱は
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廃離宮に場所を移してからは、面白い程に事が進んだ。それも、仲間に引き込んだ人たちの惜しみ無い協力のおかげだった。
その甲斐あって、短期間でかなりの情報量が手元に集まった。それでも十分ではなかったから、一度広場で注目を浴びることにしたのだ。
国民たちからの軽蔑。
妃たちの敵意、妬み。
高官たちの憎悪、悪意。そして……殺意。
何百何千という夢を渡り歩く羽目にはなりそうだが、大方これで無事情報は集まったと言っていいだろう。
問題があるとすれば、夢の順番が選べない事と、今回はどれだけの間眠りにつくのか、一切予想ができない事くらい。
……夢は、いつか醒めるもの。
だから、終わるのを待っていればいい。
ただ寝首だけは掻かれないよう、予め対処はしておかないと。
『……暫く匿って欲しいというのは……』
『できれば私がここにいることも、誰にも知られたくはないの』
瑠璃妃には既に少女の事で世話になっていた。無事に幼馴染みとも再会させることができたし、本音を言えばこれ以上彼女に借りを作るのは避けたかったのだが。
『……あの方と喧嘩でもされたのですか?』
『そんなんじゃないわ。まあ詳しい話はしないことが多いから、向こうは私に腹は立っているでしょうね』
でも、頼れるのは他にいなかった。
『御事情は存じ上げませんが、もしもここで貴女様を迎えた場合、私は何をすれば宜しいのですか?』
『私の世話をして欲しいの。食事に入浴、排泄も頼みたいわ』
長丁場になれば、体に褥瘡ができる。
国一つ滅ぼす前に、自分の身が滅びるようなことになれば、この提案に乗ってくれた皆の足を引っ張りかねない。
聡明な瑠璃宮なら、最後まで話を聞いてくれるだろう。秘密を打ち明けても、信じてくれると思う。
でも、この事をあのあんぽんたんに話してみろ。
……最後まで話を聞かないまま過保護全開で暴れまくり、挙げ句の果てには計画をおじゃんにしかねない。
『承知致しました。一先ず私が臥せっていることにして、侍女たちに伝えましょう。私一人だけでは手が回らないこともあるでしょうから、侍女頭には付いてもらいますが、それでも宜しいですか?』
『何も聞かないの? どうして?』
『……そうですね。貴女様でも、異性の方に裸を見られるのは恥じるのだなとは思いました』
『え? いや、そういう意味ではなくて』
『それに、彼の心労も、なるべく少ない方がよいでしょうから』
『それは……』
きっと、長い間姿を消せば捜し回るのだろう。
できればさせたくなかった。
でも、そうせざるを得ない。
だって、選んだから。
『愛されているようで』
『あなたでも冗談って言うのね』
“また、あえる?”
……苦しい時間は、短い方がいいのよ。
#Love you/和風ファンタジー/気まぐれ更新
2/24/2024, 9:49:49 AM