「高校デビュー」
君は知らないだろうけど、僕はずっと君を見ていた。
同じ高校に進学することに密かに喜んでいたけど、まさか君が、いわゆる高校デビューするとは。
今どき珍しい、ぴっちり編み込まれた左右の長い三つ編み。ヤボったくて長めの前髪。変なフレームの大きな眼鏡。そんな格好をしていても、よく見るととんでもない美少女──それが中学時代の君。
今の君は、髪を鎖骨の辺りの長さに切り、明るい茶色に染め、前髪も流行りの軽やかなスタイル。眼鏡はやめ、カラーコンタクトに。ぱっと見て、誰がどう見ても美少女だ。
君は知らないだろうけど、僕はずっと君を見ていた。
クラスメイト、同じ学年の生徒、先輩……数多くの男を虜にしていく君。
君が遠くに行ってしまったような気がする。
だけど、君が幸せになるなら……
高校デビューなんてしようとも思わなった僕は、ただ、中学時代と同じように陰で君を見つめ続ける。
君は知らないだろうけど、僕は君が陰気で地味眼鏡だと揶揄われていた頃から、ずっと君だけを見ていた。
そして、それはきっとこれからもずっと。
────花咲いて
7/23/2024, 10:18:43 PM