先程まで泣きじゃくっていた彼女の小さい背中は、一定のリズムで緩やかに上下している。どうやら眠ってしまったらしい。起こさないようにそっと毛布をかけて、僕はベッドから降りた。
酷いことを言ってるのはわかってる。でも、私が好きなら、今すぐ抱いて。
涙で頬を濡らし震えた声で迫ってきた彼女は失恋してしまったらしい。以前彼女に告白したときは好きな人がいるからと断られたが、おそらくその人なのだろう。わざわざ家まで押しかけて、僕の好意を利用して吹っ切れようとしたみたいだ。押し切られて家に上げてしまった僕も悪いのだけれど。
行為を頑なに拒否すると、大粒の涙が溢れて止まらないものだから困り果ててしまった。何か温かいものを用意しようと部屋から出ることを試みたが腕を掴んで離してはくれないし、好きって言ってくれたのに、と喚かれては罪悪感で押し潰されそうだった。
君のことは今でも好きだし、愛してる。でも、愛しているからできないこともある。今僕が君のためにできるのは、君が目覚めたときに温かいココアを提供することくらいかな。
『愛があれば何でもできる?』
5/16/2023, 12:21:48 PM