未知亜

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 自動ドアを抜け角を二回曲がると、バス停はすぐに見つかった。寒々しい日陰のベンチに腰を下ろす。
 初老の小柄な男性がやってきて、しげしげと時刻表を眺め、ひとつぶん空けてベンチに座った。けれど時折身体を道路側へ傾けるようにして、彼はしきりになにかを気にしている。青空の下、巣穴に立って周囲を窺う動物……最近なんかで見たなあ。名前なんだっけ。
「遅いですよね」
 そうだ、プレーリードッグ。思い出した瞬間、話しかけられ、一瞬なんのことか分からなくなる。
「バス」
 笑ってつけ足されて、おやと思った。
「次、四十五分ですよね? まだ二十八分ですから」
 プレーリーさんは不思議そうな顔をしたが、
「あっ、そうか」
 と小さく叫んだ。
「もう平日でしたねえ」
 年末年始の名残なのか、土日ダイヤを見ていたらしい。
「教えていただいて良かった。ありがとう。ちょっと時間潰してきます」
 プレーリーさんは丁寧にお辞儀をして、手に持った茶色の帽子をかぶり直し駅の方向に歩いていく。
 彼の行く手をやわらかな陽射しが照らしていた。

『冬晴れ』

1/6/2026, 8:25:42 AM