Yushiki

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「私の好きな色は何でしょう?」

 目の前の彼女からそんな質問を向けられる。

「どうせその日の気分で毎回変わるんだろ」

 彼女の性格をよく知っている俺は、この答えを導き出せないだろう不毛な問いかけに、さっさと終止符を打つ。

「君の答えは当たっているけど、正解じゃあないよ」

 謎を深めて返ってきた返しに、俺は首を捻った。彼女がふいに微笑む。

「ちなみに今日の私の好きな色は青だよ」

 青と聞いて、俺は幾つか考えを巡らした。

 確か朝テレビでやっていた星座占いが、彼女の今日のラッキーカラーは青と示していたような・・・・・・?

「それとも、お前が昨日の放課後に買っていたノートが青系だったから? もしやお前が今ハマっている漫画のキャラクターの名前が青山だからか? いや、それか・・・・・・」

「・・・・・・。君はずいぶんと私のことを見てるのに、自分のことには超がつくほど鈍感なんだね」

 彼女の言葉に俺は訝しげに眉を寄せる。彼女は「正解に辿り着くにはしばらくかかりそうだから、さっさと学校に行こう」と、俺の左手を取り歩き出す。

 俺は先へ行く彼女に手を引かれながら、思考の続きに没頭していたせいで、俺の左手首に巻かれた青色の腕時計を見た彼女が、至極可愛らしく笑ったところを見逃した。



【好きな色】

6/22/2023, 4:14:18 AM