飴玉

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ちら、と目を開けると眠気が私を抱き締めている。
あの日から、随分と気が楽になった。傷元でじゅくじゅくと膿んでいた膿を取り除いた様な気持ちで、かなり気が楽で。しがみついていたものを全て忘れてみると、かなり気が楽だ。
休日に出勤しなくていい、休日にやるべきことをやらなくていい。だってやるべきことがそもそも無いのだから。
太陽があんなに輝かしく見えるのは何時ぶりだろうか。誰かの膝に優しく寝かして貰えるのは初めてだと思える。
嗚呼、素晴らしきかな、あの人。
無償の愛をくれるあの人の愛に答えるために、愛を貰うために、愛を求めている。その美しい姿と愛は今、自分だけが独占している。
………?
何故って、そりゃあきみ、求めたからである。
堕落していると言うなれば、少しだけならあの人の膝に寝かしてやってもいい。すぐきみもあの人の虜になってしまうさ。あの人の愛は底なしだ。働いている時も、何をしている時だって、あの人の愛を求めてやまないんだ。
きっとこれは運命だ。きみもあの人の愛を頂く権利があるのだろう。本来なら独占したいところだが、あの人の前で醜態は晒すまい。あの人は、きみも自分も愛してくれる。
もしかすると、きみを、きみだけを愛してくれる、聖母のような人をあの人が紹介してくださるかもしれない。
いいのかって、構わない。あの人の愛によって自分は余裕ができた。素晴らしいこの愛を、私は得た。
…あぁ、暫くしたらすぐ退いてくれ。その人はあくまで私の愛なんだ。奪おうとするならばきみがどうなろうと私の知ったことでは無い。
………。
どうだい?夢心地だろう。ひどく愛がこもった表情で微笑んでもらえて、ひどく愛がこもった口に褒めてもらえて、ひどく愛がこもった腕に抱きしめてもらえて、ひどく愛がこもった手で撫でてもらえて、ひどく愛がこもった声で愛を囁いてもらえて、望めばあの美しい唇に接吻も給われたんだ。
そうだ、きみも愛に飢えているな。あの人に頼んで、愛をくれる人を探すといい。きっとすぐ見つかるさ。そろそろ起き上がってくれ。愛しいあの人は私のものだ、そろそろ膝から退くといい。
………。
愛しい人、ようやく君の膝の上に戻ってこれた。はあ…なんて美しい。君の傍で眠りたい、君の傍で目を覚ましたい。君の微笑みは私の為だけにあればいいよ。明日が嫌だ。きみと離れなければならないから。私を考えていて。私の姿を覚えていてくれ。片時も忘れることは許されないんだ。
常に私を膝の上に乗せていてくれ。君の真実の愛は私の元にある。私が愛するのは君で、君が愛するのは私だ。どんな時も君は私を愛さなければいけない。愛しい君は私へ愛を囁くんだ。さっきの奴への愛は嘘っぱちだね。分かるよ。
何故って、それは君が愛しているのは私で、私が愛しているのは君だからだ。愛しい人、君の手を煩わせて申し訳ないがさっきの彼奴…彼奴にも、丁度良い奴を紹介してやってくれないか?勿論私の二の次で構わないから。
やめてくれ、やめてくれ。撫でる手を止めないでくれ、君の手に愛がこもっていないと私は生きていけないんだ。君がいないと私の存在意義はなくなる!君というものを失えば私はどうして生きろと言うんだ!なんて酷い!
………。
あぁ、良かった。君の柔らかな愛のなんと愛しいことか…
あぁ、済まなかった。他の者の話をした私が悪かった。抱き締めるよ、撫でようか、抱き締めようか、接吻しようか、愛を囁こうか、何でもしよう。
愛しい君、他のものなんて愛でないでくれ。私は君がいればそれでいい。ほら、私に顔を見せてくれ。接吻をして、共に眠ろう。私達はずっと傍にいるんだ。
ほら、愛を囁いてくれ。
私だけだと言ってくれ。
君だけだと言うから。

10/17/2024, 12:33:30 AM