白井墓守

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『春爛漫』

春爛漫である。春爛漫。
……起きたら、部屋の中が桜の花びらで埋まっていることを、春爛漫で済ませて良いものなのだろうか??

○○○

そもそも、である。
春爛漫とはなんだろうか。

頭のくるくる癖っ毛に桜の花びらをくっつけたまま、僕は物知りな偏屈博士のところに転がりこんだ。

「先生、博士先生。春爛漫とは、なんですか」
「お前の頭の中じゃよ、くそガキ」

人間を三人ぐらい纏めて殺したみたいな、殺人鬼も裸足で逃げ出す目付きがヤバい悪人面。喉が地獄から繋がっているのかと思うような低く響く恐ろしいがなり声。
……うん、博士だ。

それにしても、僕の頭の中が、春爛漫とは、いったいどういうことであろうか。

少し、考えてみたが分からなかったので、素直に聞いてみることにした。

「先生、博士先生。春爛漫が僕の頭の中とはどういう意味ですか、考えても僕には分かりません。教えてください」
「チっ!!!! くそガキ、今の状態を見て呑気に何事も無いかのように、そんな質問が出来るから、お前の頭の中は平和でお花が満開に咲き誇るあっぱらぱーだと、言っておるのだ!」
「ふむ、なるほど。ありがとうございます」

僕は素直な性格だ。
だから、今一度、博士先生の様子をじっくりと見てみることにした。

いつもの同じ室内。
特にサイズが変わっている訳では無さそうだ。
いつもと同じ家具の配置。
ベットが二つとか模様替えもして無さそうだ。
いつもと同じ服の博士先生。
この人はいつも同じ服を来ている。ファッションの概念無いんだ。この前、クローゼットに十着同じ服を見たことがある。

「うーん、全く分からない」
「春爛漫野郎がっ!!」
「強いていうなら、室内に溢れんばかりの桜の花びらが溢れて、それを必死に博士先生が掻き出して窓から外に捨てている事ぐらいだけど、うーん。いったい何が違うんだろう」
「答えを自分で言っておいて、なお分からないならお前に付ける薬はこの世に存在しないだろうな!!」

おや、?
僕は目をぱちくりとさせた。パチパチ。
周囲には僕の起きた部屋のように、桜の花びらが溢れている。

「先生、博士先生。もしかして、この桜の花びらですか?」
「それ以外に、何があると言うんだ、この馬鹿モノ!!」
「いや、しかし。こんなものは異変でも何にもないですよ。僕の部屋にも当たり前の顔をしてありました。ほら、雨が降ったりするじゃないですか。あれと同じですよ」
「お前は雨が、日本中の部屋の中にでも降ると思っているのか!!」
「気分なんじゃないですか、そこは」
「この春爛漫野郎め!!」

博士先生は御年九十を超えるご老人の筈だが、とても元気で快活に、今も僕に怒鳴りながら桜を掻き出すという作業をしている。いったい、この力の源は何なのだろうか、不思議だ。

僕はそう思いながら、頑張っている博士先生にお茶でも淹れてあげようと、勝手知ったる我が家とばかりに台所へと向かった。

今日は春だし、桜のお茶にでもしてあげようかなぁ。


おわり

4/11/2026, 3:02:33 AM