「お花見って初めて?」
「うん。そうかも」
「じゃあ私が手取り足取り教えてしんぜよう」
「教わるようなものだっけ、お花見って」
普段のみなれない日本酒を飲んでいるから、貴方はきっと早くも酔ってしまったのだろう。頬の色は、桜、というより梅の花に近いピンクに染まっている。
「まずはね、お花派かお団子派に分かれるんだよ」
「はぁ」
「お花派の人は、桜を眺める。お団子派は今日持ってきたお弁当とかをただ無心に食べる」
「色々初聞きだな……ちなみに貴方はどっち派?」
「断然、桜餅派だね」
「あぁそう。じゃあこのお弁当は私が頂くね」
「ダメだよ!私の好きな卵焼きが入ってるんだから!」
「桜餅派なんだから黙って桜餅でも食べてればいいのに」
私は貴方に、小綺麗な箱に入った桜餅を差し出す。貴方にお花見をすると急に誘われた時、なにか持っていった方がいいだろうと思って近場のスーパーで買ってきた少し高めの桜餅だ。
私は桜餅なんて食べたこと無かったから、味なんて知らないけれど、貴方は喜んで桜餅を頬張った。
「貴方も食べてみたら?桜餅。あ、もしかしてお花派だった?」
「ん、いいや。私はお団子派」
「そこは桜餅派でしょ〜」
「そもそもお餅とか、お団子とか、好きじゃないし」
「全く。じゃあ全部私が食べちゃお〜」
貴方が桜餅を食べている間に、私はお弁当の中身を口に放り込む。桜色のかまぼこ。いつもより、美味しく思えた。
春爛漫の空の下で、私たちはそれぞれお団子を頬張った。
4/10/2026, 12:04:11 PM