妄想

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『まだ見ぬ景色』


「はは…泣いてるの?僕、ちゃんと約束どおり君に会いに来たよ」

彼はボロボロの体を引きずるようにして私の元に帰ってきた。にこにこ笑っているが、顔は酷く青白い。
もう彼とそんなに長く一緒にいられないことは抱きしめた時の身体の冷たさで分かった。

やっとまたあなたに会えたのに。
ぼろぼろと涙がこぼれていった。

「あぁ…泣かないで。僕、君の笑ってる顔が好きなんだけどな…」

とても苦しそうなのに彼は笑顔のまま話し続けた。
でも、どんどん彼の声は小さくなっていた。

私は、はっと昔聞いた話を思い出した。
そして、彼が持っていた剣で自分の眉毛の上の辺りを思いきり切りつけた。
そして同じ場所にある彼の傷に優しくキスをした。

「これでお揃い」

「私、聞いたことがあるの。負った深い傷は来世痣になって現れるって。きっとこの傷が、次の私たちを導いてくれる。」

「でも…あなたの傷はここだけではないけれど…」


彼はかなり驚いたのか少し固まったあと、静かに笑った。

「はは、なかなかやるねぇ…ごめんね。
でもありがとう。これで来世で君を探せる。
きっと…いつになるかは分からないけど絶対
会いに行くから。」

彼は残っている力で少しだけ強く私を抱きしめた。
そして、まるで母親に甘える子供のように 温かい…
と呟いた。

「愛しているよ。」

まるでそれが呪いの言葉のように、
その言葉を最後に彼は永遠に動かなくなってしまった。

その後は何時間泣いたか分からない。

早く彼の元に行ってしまいたかった。

でも彼は私を見つけると言ってくれた。
彼が言うなら絶対だ。
何があっても約束を守ってくれる優しい人。
私、あなたの分も得を積んでおくわ。
また会えるように。
そしてあなたが守ったものを次は私が守るの。
だから死ぬ訳にはいかない

まだ見ぬ景色。
きっと君はそこで待っていてくれるはずだから。





1/13/2025, 12:11:16 PM