特盛りごはん

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 同じような空に同じような雲が同じように流れてゆく。寝て起きて働いて空腹を抱えながらまた眠る。毎日同じことの繰り返しで、自分も世界もなんとつまらないのだろう。

「そんなことないわ」

 自分の言葉に不思議そうに首を傾げた少女は手入れの施された綺麗な爪の指先ですいと頭上の空を指し示した。

「今日はいつもより雲が少なくて昨日よりも空が青く感じない?流れ方はなんだかゆっくりかしら」

 ね、と同意を求められて空を見る。自分にはいつもと変わらない空と雲が広がっているように見えたけれど、もし少女の言うように毎日自分が見逃していたような些細な変化が積み重なっているのだとしたら。
 それは、ほんの少しだけ素敵なことのように思えた。

「……そうかもしれない」
「きっとそうよ」

 自分には色褪せて見えるこの世界も、この硝子球のような瞳には色鮮やかに映っているに違いない。それは羨ましくも妬ましくもあり、そして憐れでもあった。
 こうして空を見上げる少女は足元で広がる現実を知らない。もし空を見上げるのに疲れてその足元を見てしまった時、空の青さに慣れた少女のこの瞳は何色に濁るのだろう。
興味はある。けれど。無垢に無邪気に笑う疎ましくも愛しい少女の笑顔に、そんな日は来なければいい、と少年は思った。



/澄んだ瞳

7/31/2023, 12:36:16 AM