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 はっと目が覚める。時計を見ると、家を出る時間が迫っていた。あわてて飛び起きて、身支度をする。家を出て、駅までの道を急いだ。
 
 最初の関門は信号だ。車通りが多くてなかなか変わらない。やっぱり赤だ。車の信号が赤になった。もう横の人が歩き出した。行く?と思っていると、ようやく青に変わった。小走りで横断歩道を渡る。その先には細い小道が続く。前の人がゆっくりゆっくり小道に入ろうとしていた。脇から、すっと入って追い越させてもらう。
 
 次は、踏切だ。カンカン…と聞こえてくる。まだ遮断機は降りていない。今日だけ…。慌てて走った。心臓がだいぶドキドキしている。いつからか、あんまり走らなくなっていた。慣れない走りに足がもつれそうになる。
 
 駅に近づくと、向かう人と出てくる人で流れができている。出てくるほうの流れが少ない。今日だけすみません、と思いながら、そちらを通る。やっと駅に着いた。汗をふきながら、大きく息をする。なかなか呼吸が整わない。朝から倒れそうだ。最近の夜更かしがたたった。寝る前に何かしたくなるのを、今日こそ我慢しようと思った。
 
「今日だけ許して」

10/5/2025, 8:44:17 AM