泡の中は快適だ。
安全な膜で守られて、僕たちはふわふわ漂っていた。
子どもの頃を思い出す。
どんなときも、親の愛情で守られていた。それなのに、僕たちは自由に外へ出ては、解放を味わって、そのままそこには戻らない。
色々あって戻ってきたのは、泡の中だった。
漂いながら僕は誰もいないところへ向かおうとした。ぶつかると割れてしまうから。泡は少しの刺激で割れてしまう。誰にも壊せないように僕は一生懸命に逃げた。そして、誰も壊さないように。
景色は移り変わり街中から山の中に来た。人っ子一人もいない。僕は自由だ。子どもの時のように。
でも、見つけた。
僕と同じような顔をして君もこっちを見ていた。
同じように、自由を味わった後に訪れる動揺。一人になるためにここに来たのに。君と僕は似たもの同士なんだろう。
少しだけ気持ちがそちらへ向いた。そのとき、僕たちは惹かれあって、泡がくっついた。
割れちゃう!
泡は弾んで大きく形を変えた。だけど、割れることなく泡は一つの泡になった。さっきよりも大きな泡。
君は僕の方を見なかった。僕も黙ったままだった。
だけど、泡は一つになってしまった。
僕が君の手に触れると、君は一度その手を引っ込めたけど、恐る恐る手を伸ばした。
僕たちは初めて顔を合わせて、前を向いた。
僕が本当に強くなれたら、泡は割れると思う。
君を守ってあげられるように、泡を割れるように僕は前を向く。
8/5/2025, 11:27:14 AM