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「夢を見たんだ、」

そっと僕は語りかける。
荒れた大地の上に立って、粛々と世界の終焉を待ち侘びるだけの時間。植物や動物なんかの生き物の気配はなくて、おそらくあの雰囲気だと食べる物も高が知れているだろう。
ちっぽけな人間にはどうしようもできないと肌で感じるほど荒廃した空間だったのに、今思えば、夢の中とはいえどうしてか僕は恐怖を抱いていなかったんだ。

……思い返してみれば、あの荒廃した世界でも、変わらずに君が僕の隣で手を握ってくれていたんだよ。それが当然だとでも言うかのように。


深夜二時。静かに語りかける僕の隣には、穏やかな寝息を立てる君がいる。起きる気配のない様子に、思わず笑みがこぼれる。柔らかな頬をなで、そして額に唇を寄せる。

もしもこの先、夢と同じような運命を辿ることがあれば、世界の終わりに君と手を繋いでいたいけれど。
今はまだ、君との穏やかな幸せを噛み締めていたい。


『世界の終わりに君と』
#.4

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『世界の終わりに君と』
別ver.


眠れない夜に繰り返し考えることがある。よくある連想ゲーム。もしも世界が終わる時、誰と一緒にいたいか。
この答えは、何度考えても脳裏に思い浮かぶあの人ただ一人だ。大好きな家族でも大事な友人でもなく、ずっと想い続けてきたあの人。
そして、何度考えても、叶わない願いだと思い知るのだ。

あの人の隣には、もうずっと変わらずに大切な人がいる。
いつ見ても穏やかな雰囲気で、それでいて甘い空気を漂わせている仲睦まじい二人。あの二人なら、世界が終わるその時まで、いつものように手を繋いで寄り添っているんだろうな。


そこまで考えて、ため息をひとつ。
どうも自分には、たかが空想の中でさえも、世界の終わりに君と過ごす権利はないらしい。

6/7/2024, 2:22:41 PM