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昔から何でも姉と比べられてきた。
勉強の出来、スポーツ、容姿、人間性、そのすべてを。
姉が「あなたはすごい。」と褒められても、私の場合は
「どうしてお前はこんなこともできないの。」
と、否定の言葉ばかりがぶつけられて、日に日に劣等感が膨れ上がっていつも死にたいと思っていた。
───あの子に出会うまでは。
高校2年生になり、新しいクラスに馴染もうとみんなクラスメイトに話しかけていた。かくいう私も新しく出来た友達に愛想笑いをしながら教室を見渡していた。
すると、一人で背を縮こまらせながら本を読んでいる
女の子を見つけた。その時、声が聞こえてきた。
「ねぇ、あの子も同じクラスなんだ。」
「ああ、地味子って言われてる子でしょ。話しかけても無視するし、ノリも悪いし、いつも一人でいて中学じゃいじめられてたって噂もあるよ。」
「ああいう暗い子ウチのクラスに合わないよね。」
「確かにね~」
少し嫌な気分になりながらも授業の準備をする。
相変わらず彼女はうつむいたまま準備をしていた。
そして、放課後図書室で勉強をするために向かうとそこには彼女がいた。本を読んでいる彼女になんとなく話しかけてみようと近づく。
「ねえ、貴方。」
「ひ、ひゃい!」
「ふふっ、ひゃいって。」
「あ、あの何か用ですか?」
「いや、なんとなく話しかけてみたいなと思って。」
「そ、そうですか。」
そこから私たちは少しずつお互いの事を話して一通り
自己紹介をし終えると彼女はぽつりと呟いた。
「いつも、人と話すのが怖くて顔を下げちゃうんです。そんなんだから地味子だとか言われて、いじめられて。勉強もなんにもできなくて、こんな自分は嫌なんです。だから話しかけてくれて嬉しかったです。」
こんなに震えて一人ぼっちな彼女を可哀想だと思っているのに、なぜだか満たされた気持ちになる。この気持ちの正体がわからないまま、
私は彼女に言う。
「私があなたの友達になる。だからもう敬語はやめていいよ。」
「本当に?ありがとう。」
それから私は彼女と図書室で待ち合わせをし、勉強などを教えたり話すようになった。
どうやら、彼女は勉強もスポーツもできないようで教えるのに苦労した。だけど。
「すごいね!私とは大違いに何でもできるんだね!」
その言葉を聞いた時、彼女を見ていると込み上げてくる気持ちの正体に気づいた。
それは────
「どうかした?」
「う、ううん。何でもない。」
それは優越感。何もできない彼女に先生ぶって勉強やいろんなことを教える。いつも姉と比べられてきた私が他人に尊敬の眼差しを向けられるために、多分彼女を友達に選んだ。自分自身の満たされないものを満たすために。なんて最低なんだろう。でもやめられない。だってそれでも彼女は私によって救われたのだから。親友にだってなってあげた。だから少しくらいいいでしょう?
そんな言い訳を心の中でしながら私は彼女に向き直った。


『優越感、劣等感』

7/14/2023, 8:41:59 AM