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「やはー!いい天気ですね!!」
澄んだ晴天に、茜の声が吸い込まれる。
「そうね」
葉月も茜に同調し空を見上げた。昨日までの雨が嘘のように、快晴。茜がこう叫びたくなる気持ちも分かる。
いつもならジリジリと鬱陶しい蝉の声は、夏の始まりを告げているようでどこか心地よい。
「帰りにアイスでも買って帰りましょ!!」
「またおごらせないでよ?」
「分かってます! 今日はいちご味のやつがいいです!!」
おごられる気まんまんじゃないか。
思わずクスリと笑う。
「こら!いつまで喋ってるんだ!もう一周走らせるぞ!」
体育教師の低い声が校庭に響く。
いけないいけないと2人で駆け出した。
爽やかな風を背に、びゅんびゅんと速度を上げていく。茜も負けじと横に並ぶ。
葉月はふと空を見上げた。
青いキャンバスに描かれた、白い一本の飛行機雲。
あぁ、夏が来る。

7/16/2023, 12:42:10 PM