頁。

Open App

 白くぼやける視界のどこかで真白なしっぽが揺れている。
 姿はほとんど見えないけれど、あれはおそらく猫だろう。細長くて、柔らかそうで、ゆらゆらと左右に揺れるあれは、きっと猫のしっぼに違いない!
 であれば保護しなければ。こんなところに長いこと居続けたら良くないのだから。

 ……はて。
 疑問を孕む声が不意に口をついて飛び出した。

 ここはいったい何処だろう。
 なぜ僕はこんなところに一人立ち竦んでいたの?
 良くないって、なに?
 そもそも──僕の、なまえは?

 深まりつつある霧の中、しっぽは変わらず揺れている。


▶︎光と霧の狭間で #15

10/18/2025, 6:37:52 PM