ガルシア

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 細い指がページを捲っている。伏した目は長い睫毛と鮮やかに色づいた瞼が印象的だ。少し持ち上げられた表紙を見るに、読んでいるのは僕が以前勧めた小説らしい。こうして素直に手に取ってもらえるのはなかなか嬉しいもので、司書冥利に尽きるというものだろうか。
 図書館の司書と利用者という立場がある手前館内で盛んに話すことは少ないが、僕と彼女は図書館以外でも会うようになり関係を深めていた。知れば知るほど彼女は魅力的で、彼女の方も僕をそう思ってくれていればいいのにと自惚れてしまう。素直で聡明で、本の感想を尋ねるとなかなか面白いことを言った。
 本棚に本を並べながらぼんやり見ていると、視線に気がついたのか彼女が顔を上げた。僕に気がつくと花が開くかのように微笑み、軽く手を振ると小さな手を振り返す。なんと無垢なことだろう。君がそんなに純真に笑うものだから、僕の頭は揺れてしまうのだ。
 ずっと待ち侘びた君を、二度と僕から離れられないようにできれば良いのに。と願ってしまうのだ。


『理想のあなた』

5/20/2023, 7:39:44 PM