神木優(かみきゆう)という名前。平々凡々な名前。優しい人になりなさい、みたいな由来だったと思う。詳しくは覚えていない。名前なんて人と人を区別するための記号。そんなふうに思っていた。
そんな痛々しい僕の中学時代。あだ名をつけた女子生徒が一人。彼女は病弱で、もう死んでしまっているのだが、僕を見つけるとパッと笑って、『キユウ君』と読んでいた。
彼女はどこか世間知らずなところがあって、というか、病院で大半の人生を過ごしているからか、学校に来れたことが嬉しくて、無茶をしていたんだと思う。
それを端から見ていて、内心ハラハラしていると、彼女は「キユウ君は心配性だな」と、いつも笑っていた。
僕のことをキユウ君と呼ぶ人はもういない。
でも、時々お墓に弱音を吐きに行くと、声が聞こえる気がする。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。まったく、キユウ君は心配性だな」
7/21/2024, 12:24:24 AM