ミミッキュ

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"力を込めて"

「おっ」
 風呂から上がってテレビをつけると、スポーツの試合中継をやっていた。日本と海外の試合。
──やっぱり小さいなぁ…。
 日本のチームと相手チームを見比べる。いつ、どのスポーツの試合を見ても、日本の選手の方が小さい。点数を見ると、流れは若干向こう側にあるようで、こっち──日本のチーム──が一点差で負けている。だが、どうやらまだ始まったばかりのようで、あまり気にする段階ではない。が、試合が進むにつれ、一点…また一点と、じわじわと点差が開いていって、ついに五点差になってしまう。
「……っ」
 ルールなんて学生の時に軽く授業で知った位でうろ覚えなのに、そもそもスポーツ観戦なんて今まで一度もした事ないはずなのに、何故か祈るように手を組んで固く握ってしまう。
──頼む。流れを切ってくれ…っ。
 より力が入って更に固く握って祈り、見守る。そう祈っていると、見た事無い長い長いラリーが続く。ボールが上がる度に一喜一憂する。しだいに心臓の鼓動が早くなる。こんなの初めてだ。
──ここで点を取って流れを変えろ…っ。
 ぎゅ、と目を瞑る。すると数秒後、ホイッスルが鳴り響いた。
 こちらに点が入った。
「……っ!」
 テレビから観客の歓声が轟く。固く組んでいた手を解いて、小さくガッツポーズする。
 その後は流れがこちらに来たようで、どんどん点差を縮めて、ついには逆転した。
 その後はじわじわと点差を開いて、そして
 とても綺麗な直線を描いた攻撃で、勝利した。
「……っ!」
 言葉にならない歓喜の声が声帯を震わせる。そして、テレビの向こう側にいる選手達に拍手を送る。
 まさか、テレビをたまたまつけたらスポーツ中継で、ルールなんて殆ど知らなかったのに、それにこれ程までに熱く観戦してしまう日が来ようとは。けれど、悪くない。こんな気持ちになれる自分を知れて、とても嬉しい気分。
──後でルールを調べよう。ネット配信とかやってるかな?
 そんな事を考えながら、寝支度をある程度済ませた。横目で選手達の歓喜の表情を見ながら。

10/7/2023, 1:56:53 PM