「胸が高鳴る」
彼は、まるで神様のように見え、胸が高鳴った。
昔から読んでいた絵本に出てくる、皆から愛され、
尊敬され、崇められ、聖人で、竜殺しの英雄とされる彼
彼が生きている時代に生まれていたら、もう少しだけ自由になれていたのかもしれないと思っていた。
そんな彼が今、目の前にいる。夢だと疑った。
こちらに伸ばしてきた手を払払いのけて、背を向けて逃げ出した。
怖かった。救われると分かっているのに、それがどうしても怖かった。自分があんな神聖なものに触れて良いわけがないと思ってしまった。
私が、私を、神様はきっと許さない。
こんな怪物が救われて良いはずがない。
彼が私を探しに私の部屋に入ってくる。もうどこにも逃げ場はない。
きっと彼には、私が怯える小さな子供に写っているのだろう。慈愛に満ち溢れた瞳が私を離さない。
ああ、神様、どうか私を救わないで。救おうとしないで
私は、わたしは、すくわれていいはずがない
3/19/2024, 1:09:47 PM