白灰

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———あの日から、数百年。

木陰で2人の男女が木に背を預け、
手を繋ぎ眠っていた。

2人には、
花が咲き、
苔が生え、
木の根が絡まっていた。

人類は、眠りについていた。

神の怒りをかったのか、
何らかのウイルスによる影響かは不明だが、
起きている人間などいなかった。

人類は、自然と共存していた。

自然破壊をする人間など存在しない。
戦争をする人間など存在しない。
地球は平和になった。

2人の上をリスが走る。
2人の上で小鳥が歌った。
2人の周りで兎が踊った。

人間を傷付けるものは居なかった。
動物たちは、人間が動物の一種だった事を忘れたのだ。

文明は崩壊した。
幾ら待っても、技術を理解する動物は現れなかった。
それでも、時計の針だけは進み続けていた。

風が吹き、
木陰が揺れる。

7/17/2025, 2:21:17 PM