『色とりどり』
色とりどりの風船が飛んでいる。
赤、緑、青、オレンジ、紫、ピンク……。
「また眺めているんですか、師匠」
「うん」
振り返ると小柄な少年が一人居た。
金色の猫のような目付きをしており、つんつんした栗色の髪の少年だ。
僕の一番弟子。口では師匠の慕ってくれているけど、リスペクトを感じたことは一度もない。でも、ずっと側に居てくれている。……まるで猫みたいな子だ。
「師匠は、なんであんなものが好きなんですか? 邪魔なだけでしょうに」
「そんなこと言わないであげてよ。あの子たちだって、懸命に生きてるんだよ」
「放っといても勝手に生きて、勝手に死にますよアイツラ」
ふんっ! と眉間に皺を寄せて、顔を横に背ける少年。
彼はどうにもアレらが苦手らしい。
過去に苛められたトラブルでもあるのだろうか。
「まあまあ。あの子たちのお世話が僕らの仕事さ」
「監視、の間違いじゃないですか?」
「あはは。言葉は言い様ってね」
ふと、顔を見上げた。
予兆があった。予感とも言っていい。
「師匠?」
「くるよ」
パァン!
風船が一つ、弾けた。
真っ赤な風船が弾けて、真っ赤な液体を辺りに撒き散らす。
そして、その爆発は連鎖して、周囲の風船も破裂していく。
辺りには数個の風船と、色とりどりの液体が交じり合ってぐちゃぐちゃの汚い床が残った。
「……びっくり、した」
「あはは。君は何度見ても慣れないねぇ」
「む、師匠が可笑しいんですよ! 意味分からないです!」
ぷんぷんと口をきゅっと結んで怒る少年の姿に、くすりと笑いが漏れる。
結局のところ、あの子達の身を一番案じているのは彼なのだ。
僕にはもう、雨や雲なんかの風景の一部と化してしまった。
「さあ、集団自殺した人間の魂を運ぼうか」
「……はい、師匠」
それが僕たち、天使のお仕事なのだから。
おわり
1/8/2026, 11:37:21 PM