いしか

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哀愁をそそるのは、この季節のせいだ。
理由もなく泣きたくなって、悲しくなって。

ポロポロ、ポロポロ涙は零れ落ちる。

本当に悲しいときには涙は出ないというのなら、私は本当に悲しい訳ではないのかもしれない。

「千尋、また泣いたの?」
「うん。何だか泣けてくる……」
「心の病院は?行ってみた?」
「うん。でも、大丈夫だって」
「そうなの?」
「うん」

私の話に大真面目に耳を傾けてくれるのは、私の友達の紗夜(さよ)

「どうして悲しくなるんだろうね?」
「うん。私にも分からない」

嘘。本当は、何となく分かってる。
私はどうやら他人よりも些細な機微に敏感に反応をするらしい。
そのせいで、他の人にはわからないことが
私には痛い程分かることが多々ある。

これはもう私の特性だと割り切るしかない。
少し扱い方に困る、私の特性だ。

「こんなもので、千尋の悲しみが無くなる訳ないけど、はい。手作りプリン」
「わ〜!私の大好物!!」

私は、紗夜の作るプリンが大好物だ。
優しくて素朴な味のプリンは、私の心を落ち着かせ、安らぎをくれる。

「これを食べれば、きっと大丈夫だよ!」
「……本当に?」

私の言葉通り、紗夜の作るプリンを食べたら、私の悲しみは嘘のように落ち着き、涙が溢れる事は無くなった。

紗夜は、不思議そうに、たまたまでしょ?
って言うけれど、私にとって、紗夜の作るプリンは魔法のプリンなのだ。

「紗夜、ありがとう!!」
「ふふ、どういたしまして」

私の大切は友達。本当にありがとう。

11/4/2023, 11:50:56 AM