【窓越しに見えるのは】
夕暮れ時
オレンジの光を浴びて輝くショーウィンドウが並ぶ道
そんな景色とは対称的に目元にくまをつくり
やつれた表情をした人が1人歩いている
突然、彼女はある店の前で足を止めた
ショーウィンドウを覗いてみると
彼女が幼い頃に見たドレスがそこにあった
手の力が抜けていくような感覚がし
持っていた荷物を落としてしまった
懐かしさ故か
ドレスを見ていると幼い頃の情景も思い出される
ドレスを見つめ希望に満ちた目で夢を語る少女
幼いあの頃の自分
いつか作りたかったもの
彼女は、少女は
窓越しにドレスを見ていたのではなく
過去の自分、未来の自分を見ていた
彼女の足元には
自らが描いたいくつものドレスが散らばっている
あの時夢見たもの
認められなかったものが足元に広がっている
彼女の目に希望が宿る
あの時のような輝きではないけれど
確かに力のもったまっすぐ前を向いた目
夢を思い出した人は強い
彼女は一度落としてしまった
まだ未完成の夢の欠片を拾い集め
さっきとは打って変わって
希望を持った凛とした表情で輝く窓を背に
夕焼け空へと消えていった
7/2/2024, 11:55:17 AM