規範に縛られた軟弱根性無し

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手を取り合うと聞くと、多くの人は助け合うとか協力するとかそういうのが一番に出てくるだろう。しかし、僕たち夫婦は違う。僕たちが手を取り合うと聞いてまず一番に出てくるのは、"会話"である。

「ハルカ?起きた?おはよ」
妻はコクリと、まだ目覚めきっていない穏やかな目をして頷いた。
朝目覚めておはようと言われたらおはようと返すのが礼儀であり、基本的なコミュニケーションだろう。まして新婚なのだから挨拶くらい当然だ。しかし、僕の妻にはそれができない。なぜなら、彼女には声帯がないからである。
妻の手が僕の手の上に重なり、妻が僕の手の甲に指で文字を書いた。
(おはようカナトさん もう少し手を握らせて?)
「あと10分くらいね?」
(うん!)
これが僕たちのコミュニケーション。妻が僕の手の甲に平仮名を書いて、言いたいことを僕に伝える。最初は妻が何を書いてるのかわからなかったけど、すっかり慣れた。
妻が僕の手を頬ずりしながら二度寝に入ろうとする。僕は妻の頬を突いて起こす。
「そろそろ10分だよ?起きないと」
(しかたないよね あさごはんつくらなきゃだもんね)
「仕事から帰ったらいっぱい撫でてあげるからね」
妻はこの世で一番かわいい笑みを浮かべて頷いた。

「それじゃあ行ってきます」
妻は僕の手を取って
(いってらっしゃい あなた)
そしてキスしてもらって家を出た。

「ただいまハルカ」
(おかえりなさい カナトさん あたまなでて?)
これだから妻はかわいい。言葉を発せない分とても甘えん坊なのだ。
しばらく玄関でハルカを撫で回した。僕のお腹が鳴るまで。
(そうだよね おなかすいてるもんね はやくたべよう)
「そ、そうだね」
もう少し撫でていたかったな。

夕食とお風呂が終わり、2人でソファに腰掛け、テレビを見ていた。もちろん手を握りながら。
(すき)
唐突に書かれたので、何を書かれたのか少しわからなかったが、いつもより強く握ってくる手と赤みがかった顔から大体予想はついた。
僕は妻をソファに押し倒した。そしてキスした。
妻は目をパチパチして動揺している。
おでこを合わせた。妻の顔が夕日の様に真っ赤っかだ。
「かわいいね、ハルカ。もっとしてほしい?」
(もっかい)
再びキスした。妻が僕の体をぎゅっと抱き寄せて密着させた。
(ベッド いこ?)
妻は恥じらいまじりに言った。

薄明かりが灯る寝室。2人はベッドで密着している。
(キスして)
僕たちは唇を押し付け合う。十分キスして離れようとしても、妻の手が僕の頭を抑えて離れるのを許さない。
(すきだよカナトさん だいすき もっとしよ? ぎゅーってしよ?)
手の甲がくすぐったくて、ハルカが好きで、可愛くて、どうにかなってしまう。
ハルカが僕の首筋を甘噛みし始めた。ついでに舐めている。
僕は妻を下にして、妻が僕にやった様に同じことをやり返した。
「はっ、はぁ…はぁっ」
妻の呼吸が揺れまくっている。
「ハルカ、もっといろんなとこにしてほしい?」
(もっと いっぱい して)
書く指が震えていた。

何回したかわからない。いろんなとこにキスし合った、、僕の理性はどこまで耐えられるのだろう。
僕をぎゅっとして離さず、幸せに眠る妻を強く抱き返して、ひたすら耐えた。

「もう、壊れてもいいかな」



改善しました。
はいかわいい。
これでいいかな多分。

7/15/2024, 4:52:49 AM