SAKU

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地面を見つめて悩んでいれば聞き覚えのある声に呼びかけられた。顔を上げようと首を動かすと隣に屈んだこれまた見覚えのある顔。
建物の影で動かない自分に不思議に思ったということだ。見れば確かにここに来てから太陽の位置が少し動いている。
傍に置いたシャベルとジョウロに目を止めてますます何をしてるのか気になったようでそのまま尋ねられた。地面を、正確にはそこから顔を出したものを指し示すとつられてそちらに向く。
苗である。
これがなに?と自分に顔を戻す相手に、自身でもこんなに悩むことかとは思うが。
日陰だとよく育たない植物であること、これを移植するか悩んでいることを伝えるとさらに首をかしいだ。
自然発生した薬草で、育ったら料理にでもと考えているがそのために勝手に移動して良いものかと。
そこまでいうと相手はなるほどと頷いた。
自分の思考は理解できずとも性格はよく知っているからだろう。どう考えたかの説明で納得したようだ。
と、唐突に傍にあったシャベルを手に取るとザクザク音を立てて苗を掘り起こし始めた。
慌てて何をしているか聞くと移動するんだろう、となんでないことのように答えたので自分が説明したのはなんだったのかと。
焦る様子が面白くなったのか笑って言う。
傲慢というならもっと大きいものを動かして見せろ、と。
大きいものとなれば、この建物のようなものかと尋ねると首を横に振られた。
中天に輝く太陽を示され、なるほどと自分も納得してしまうのは目の前の相手だからかもしれない。

7/2/2024, 11:32:59 PM