親戚のおじさんが秘密の標本を見せてあげると言ってきた
言いたいことはわかる
面白いものっていう意味で、ワクワク感を出したいから秘密の、なんだろうけど……
その言い回しだと、犯罪の臭いしかしない!
なんだかワシントン条約だとかなんとか、詳しくは知らないけれど、その手のものに引っかかりそうなものを持ってきそうな語感!
まあそんなもの、あっても私に見せるわけがないので、安心しておじさんの家に行く
「来たね
じゃあ早速、例のブツを見ようか」
この人わざと言ってるのかな?
完全に違法なものを取り扱う人の発言だよ
本当に違法な標本じゃないよね?
だんだんと心配になってきた
「これはね、自信があるよ」
なんの自信なんだろう?
驚かせる自信かな?
そんなことを考えていると、おじさんがケースを取り出してきた
そこに入っていたのは、これ、どうやって飛ぶの?と思わずにはいられない、奇妙な形をした羽を持つ蝶の標本
おいおいおいおい、これは本当に違法な標本なのでは?
こんな蝶、絶対希少種か何かでしょ
私が混乱していると、おじさんは軽い調子で笑い始めた
「この標本、僕が作った偽物なんだよ
こんな蝶はいないの
僕が考えた架空の蝶を、標本風に作ってみたんだ」
なんだ、そういうことか
反社会的な方向へ進んだかと思った
というか、すごいなこれ
作りとか質感とか、ものすごくリアルだよ
こんなすごい趣味があったんだ
「まだいくつかあるんだ
ネットに載せようと思ったけど、ちょっと不安でね
君に見せてどんな反応をするか、試したかったんだ」
これはもうバズること間違い無しなんじゃないかな
おじさんの意外な才能を見られて、私は興奮気味
「ここまで驚いてもらえたなら、載せてみようかな
趣味のことを投稿してるアカウントがあるし」
そうした方がいいと思う
私がおじさんのこの作品を見た第一号になれたのは、すごく嬉しい
それと同時に、たくさんの人に見てもらいたいと思った
「他のも見てくれるかい?」
見る見る!
私は、おじさんが他の作品を取ってくるのをワクワクしながら待つのだった
11/2/2025, 11:32:36 AM