大事にしたい。
私がいないと何もできないと思っていた。
小さくて、儚くて。
少しでも目を離せば、消えてしまいそうな気がしていた。
なのに。
「お母さん、泣いてるの?大丈夫?」
いつのまにか、小さな手でティッシュを私の目元にあててくれるほど、この子は大きくなった。
「泣いてないよ、ありがとうね。」
そう返しながら、
はじめて寝返りをうった日。
はじめて立った日。
はじめて、私を呼んだ日。
…
たくさんのはじめてを、感動をもらったことを思い出していた。
これから先もたくさんのはじめてがこの子には待っているだろう。
いつまで一緒にそれを見せてもらえるのだろうか。
大事にしたい。この子を。この瞬間を。
いつか、この子が私の元を離れていくまで。
「あなたの分まで、ね。」
部屋の隅にある真新しい仏壇に向かってそう呟いた後、まるいほっぺたが目立つ横顔をしばし見つめた。
9/20/2023, 1:05:02 PM