彼とわたしと

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そういえば、校舎の傍にあじさいが咲いていたのを覚えている。ずらーっと並んでいて、他の人は気にもとめない。「花なんてどこにでもある。」きっとそう思っているのだろう。わたしも去年まではそういう人間だった。君につられてしまうまでは。

初めて君と話した日、部活動見学に行くと教えてくれたので着いて行った。部活に興味は無かったものの、何か君に惹かれるものがあったので、君への好奇心で入部を決意した。君と関われたら何か変われる気がする、と、私の本能が示したのだ。そして、わたしの入った部活は季節感をよく意識する事がわかった。季節の置き物、季節の言葉、そして、季節の花。お花が毎日入れ替わり、その度「今日はこういった花でね、」と、先生が教えて下さる。その習慣が根付いたおかげで、外で花を見ると「どのお花かな…、こんな季節もあったな」と、季節の趣を感じるまでにも成長した。

きっと、毎日に溢れている自然のものの、その愛おしさに、私たち日本人はもっと目を向けるべきなんだ。でないと、本当に幸せなことを見逃してしまう。小さな幸せすら大切にできないのに、大きな幸せを大切にできるわけがないのだ。あの時感じた私の本能は、確実に正しかったと思う。変われたのは、心の中の幸せを導くための触覚を持つこと。そして何より、わたしの腐り切った恋心を君が光と照らしてくれたことだろう。

“あじさい”

6/13/2024, 11:46:04 AM