心の境界線 寂しくて ティーカップ 心の迷路 祈りの果て ささやかな約束 木漏れ日の跡 君を照らす月 冬へ 記憶のランタン 吹き抜ける風 です。
読み直しはしていないので、誤字脱字がありましたら、すみません。
心の境界線
自分を守るために必要とされる、心の境界線。
イヤなことをしたりされたりして、ストレスにつながることが、心の境界線を意識することで、人間関係の安定につながるらしい。
「理屈はわかるけど、心の境界線なんて意識したりはしないな」
でもきっと、心の境界線を意識しなくてもいい、そんな相手に出会えたら、自分らしく過ごせるんだろうな。
まだ出会えていない、そんな存在。
そんな存在、運命の人のような存在に出会えることを夢見て、明日へ歩くのだった。
寂しくて
「寂しいな」
広いベッドに1人で寝転がる。
いつもならいる、あなたが今日は出張でいない。
寝る前のおしゃべりも、優しく撫でてくれる手も、抱きしめてくれる温もりもない。
「1人だと、ベッドも広すぎるし、静かすぎるし、寂しくて泣きそうだよ」
スマホで連絡が取れるけど、声聞いたら会いたくなっちゃうし、明日帰って来るんだから、我慢しなくちゃ。
きっとこれからも彼の出張はある。だから、1人の寂しさに少しは慣れないと。
寂しさを紛らわせるように、体を丸め、目を閉じたのだった。
ティーカップ
彼とお揃いで買ったティーカップ。透明なケースに入れて、いつでも見れる場所に飾ってある。
「彼の仕事が落ち着くまでもう少し」
仕事が落ち着いたら、一緒に暮らす。その約束までもうちょっと。
「彼と暮らし始めたら、あなたを使わせてもらうわね」
ティーカップに話しかけ、彼の物と揃ったときのことを想像しながら、カレンダーを確認するのだった。
心の迷路
「あー、どうしよう」
髪をかきむしりながら、うろたえる。
まさか、こんなことが起こるとは、思いもしなかったから。
「どうしよう、どうしよう」
取りに帰る?それだと待ち合わせに間に合わない。買い直す?近くの店にあるかわからない。
「うー」
どうしたらいいのかわからず、右往左往していると
「どうしたの?」
不思議そうな顔をした、待ち合わせ相手の彼女に肩を叩かれる。
「あ、えと、その…」
やらかしてしまっあ失態。彼女には言いづらいけれど、黙っているわけにもいかず、意を決して話し出す。
「キミの家にお邪魔するのに、お菓子を用意したんだ。けど、忘れてしまって…」
忘れ物をした自分が情けなく、俯くと
「ありがとう。そんなの気にしなくていいよ」
優しい声がかけられる。
「でも、キミの彼氏としてお邪魔するのに、手ぶらで行くのも…」
彼氏を紹介する。ということでお邪魔するのに、初対面の彼女のご両親に、俺の印象を少しでも良くしておきたかったのだ。
「うちの親、そういうのは気にしないから大丈夫。それよりも、時間に遅れる方が良くないかも」
彼女に言われハッとする。
「そうだね。手土産は次の機会に用意するよ」
「うん。じゃ、行こう」
彼女の案内で、歩き出す。
心の迷路に迷った俺を導いてくれたキミ。
この先の道を一緒に歩きたい。と強く思ったのだった。
祈りの果て
「神様、どうかお願いします。彼女の隣になれますように」
手を組み、目を閉じ、神に祈る。
明日は席替え。今は、彼女の席は僕の斜め後ろ。彼女を見たくても、何一つ見えない。
「隣…がダメなら、せめて背中が見える位置を」
強く強く神に祈る。
祈りの果てに待ち受けているのは、吉か凶か。
その結果がわかるまで、僕は神に祈るのだった。
ささやかな約束
「おはよう」
「ん…はよ」
仕事が忙しく、休日と朝以外はなかなか時間が合わない私たち。
だから、気持ちが離れてしまわないように、あなたとしたささやかな約束。
朝起きたとき、目を見て挨拶を交わすこと。
ホントにささやかだけれど、しっかりお互いの気持ちが重なる。
これからも、ささやかな約束を大切に守っていきたい。
木漏れ日の跡
雨上がり、木漏れ日に照らされ、残った木漏れ日の跡。
跡の部分だけ雨が乾き、まだら模様を作っている。
「ねえねえ、これハートに見えない?」
「見える見える」
「じゃあ、これは?」
自然が作り出したデザインアート。
唯一無二の作品を、楽しむのだった。
君を照らす月
「遅くなってごめん」
待ち合わせ場所、公園へ走ると
「大丈夫だよ、お疲れさま」
入口で君が、君を照らす月に包まれ微笑む。
「………」
「どうしたの?」
月に照らされた姿があまりにも美しく、思わず立ち止まると、君が不思議そうに首を傾げる。
「いや、君があまりにもキレイで…」
「…え?」
僕の言葉に一度俯き
「ありがとう」
顔を上げながら、恥ずかしそうにつぶやく君に、心を鷲掴みにされたのでした。
冬へ
涼しい風が冷たい風に変わり始めると、季節が冬へと進む。
「冬、イヤだなぁ。寒いのイヤだ」
こたつでため息を吐くキミの前に
「確かに寒いのはイヤだよね」
湯気が立ち上るココアを置く。
「ありがと。あったかい」
コップを両手で包み、ホッとした顔をするキミに
「寒いのはイヤだけどさ、寒い冬にしかできないこともあるでしょ。それを楽しみにしようよ」
笑いかけると
「でも…」
キミは眉を寄せる。
「ウィンタースポーツしたり、なべ食べたり、初詣行ったり。キミと冬にしたいこと、いろいろあるよ。あ、旅行に行くのもいいかも」
楽しそうなことを並べると
「…旅行、行きたい」
キミの目が輝く。
「うん、行こう。でも、それまで体調を崩さないようにしようね」
イヤだった寒い冬。キミとの時間を想像し、楽しみに変わったのでした。
記憶のランタン
辛い出来事にぶつかったとき、俺は記憶のランタンを呼び起こす。
あのときのことを思い出してみろよ。今よりも辛くなかったか?
目を赤く腫らすまで泣いて、眠れなくて、鬱々とした日々を送った。
けど、そんな日々を俺は乗り越えたんだ。なら、今だって乗り越えられるだろ?
自分自身に問い掛け、気持ちを奮い立たせる。
「よし、やるか」
こうやって俺は、辛い出来事にぶつかったとき、前を向くのだった。
吹き抜ける風
「寒っ」
吹き抜ける風に、冬の寒さを実感する。
「寒いねえ。日陰はさらに」
隣で身震いするキミに苦笑しつつ、少しでも寒くないように、俺はコートのエリを立てた。
「そんなに寒いなら、スカートにしなきゃいいのに」
彼女だけでなく、寒いと言いながら寒そうな格好に見える女性を見て、俺はいつもそう思っていたのだが
「そうなんだけど、でも」
「でも」
「あなたに可愛いって思ってもらいたいんだもん」
彼女がそういう格好をするのは、どうやら俺のためらしい。
「俺は、どんな格好のキミでも、可愛いと思ってるし、大好きだよ。だから、俺のためにそんな格好はムリをしてまでしてほしくない」
「え?」
「キミのことが大切だから、ムリをして、体調を崩したら。って、考えただけで、胸が痛いよ」
「…そっか。そうだね」
俺の気持ちが通じたのか、笑顔を見せてくれたキミの手を掴み
「今はこれで。何も持ってなくてごめんね」
自分のコートのポケットに入れたのだった。
11/20/2025, 9:43:42 AM