パーティ全滅勇者

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(特別な存在)

夕方の電車は嫌いだ。
窮屈で空気も淀んでるから。
そういう私も心が淀んでる1人だ。
私は電車に揺られながらバックに手を伸ばしスマホを取り出した。
通知はない。そっとスマホをバックにしまった。

1ヶ月前、仲のいい友人に男性を紹介してもらった。
友達は高校からの同級生で気立てが良くて皆から愛されてた。そんな彼女とも10年以上の付き合いだ。
友達はずっと彼氏がいない私を心配し、自分が動いてやらねばと思ったようだ。。私は恋人がいなくても死にやしないし、趣味は全て自己完結出来るため必要に感じなかった。
紹介してもらった男性は私と同じ歳だった。清潔感があり、川のせせらぎの様な優しい声で年齢よりずっと落ち着いていた。無口で表情も殆ど変わらず、だけど時折みせる笑顔が優しく印象的だった。私は人見知りだったが彼には億さず話すことができた。表情は柔らかく優しい瞳で私を見つめ、私の話に頷き傾聴してくれた。なんて居心地がいいのだろう。私は初めて他人の傍を居心地がよく感じた。
友達としていい付き合いができそうだ。私はそう思った。
時間は瞬く間に過ぎた。

連絡先を交換したが、食事に誘う勇気もなく時間だけが過ぎていった。
本当に私は友達になりたいだけなんだろうか?
でも一度会っただけで恋に落ちるなんて私には有り得ないことだ。きっと違う。そう言い聞かせた。

今日も何事もなく、仕事を終えて家に帰り着いた。
(あ、明日はゴミの日だ。準備しないと。)
家に帰りゆっくりする暇もなく、明日の準備と夕食の準備に取り掛かった。
代わり映えのない毎日だな。私の人生って面白味も何も無い。そう考えながら夕食を食べた。
毎日些細なことでも幸せだと感じるようにしていた。でも毎日毎日同じことの繰り返しで、ほとほと飽きてきた。
(そういえば明日はお母さん仕事休みだったはず。一緒に出かけれるか連絡してみよう。)
スマホを開いた瞬間、私は息を飲んだ。

(お久しぶりです。今度お食事でもどうですか?)

彼から連絡が来たのだ。私は胸を高鳴らせた。
彼に会える。どうしよう、ドキドキが止まらない。
これで初めて確信を持った。
彼が私にとって特別な存在になっていたことに。
私の抱いていた気持ちは恋心だったことに。
私は色褪せていた日常が、鮮やかな色に染まった気がした。
この部屋も外の景色も全てが違ってみえた。

私も彼にとっての特別な存在になれたらいいな。
そう願いながら彼へ連絡の返信をした。

3/23/2024, 1:53:28 PM