シオン

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「人生でやりたい10のこと、なんて文言があるらしいよ」
「⋯⋯⋯⋯ふーん?」
 興味のないボクがその気持ちを全面に出して言葉を紡ぐと演奏者くんは呆れたような顔で言った。
「もう少し興味を持ってくれてもいいんじゃないかい?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯やりたいこと、あんまりないし」
「僕はあるよ」
 間髪をいれずに返ってきた言葉に少しだけ驚いた。
 この世界にいて、やりたいことが見つかるなんてなんと呑気な性格なのか、なんて思ってしまう。
「⋯⋯例えば、迷い子の思う道を歩ませてあげたい、だとかもっとピアノの演奏が上手くなりたい、だとか」
「⋯⋯それって継続じゃん。やりたいこと、って言えなくない?」
「⋯⋯きみのことを知りたい」
 真顔で言われた。脈絡はない、気がした。
「⋯⋯ボクのこと?」
「ああ、きみのこと。なんでここにいるのか、なんでここに迷い子たちが呼ばれるのか、とかとりあえず全部」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯知って、どうすんの」
「きみの正義と僕の正義に折り合いをつけて、ここをもう少しいい世界にしたい」
「⋯⋯⋯⋯何それ」
 訳が分からない。
 だいたいボクは偉い立場では到底ないからそんなこと聞かれても一ミリも分からない。だけど、分かんないとは言えないボクは悪態をつくしか無かった。

6/10/2024, 3:37:02 PM