22時17分

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嗚呼、なんて殺生なお題だ。
こんな独立語に何か書けだなんて、無茶振りにもほどがある。語源に頼るほかない。

「嗚呼」を調べて三千里。
中国語から来たそうだ。借用語と呼ばれるもので、輸入品か逆輸入されたらしい。
それで、明治時代あたりの有名な文豪たちによって、ひらがなとカタカナ、漢字などの言葉遊びが転じて「ああ」を漢字表記にした。
当て字だそうだ。特に何の脈絡もない。
きっと意味を持たそうとしたのだ。何の意味もない、ため息に精魂込めた感情で言う無名声優のように。ひと言の登場だとしても、自分の声をのせることに達成感を覚えたいと、人は思ってしまうものだ。
本来はただ時間を無為にするだけの、一拍だったと思う。誰もがその漢字を使ったから、そういうわけで、「嗚呼」と書くようになった。

鳴くように呼ぶ、でよいのだろうか。
いや、単なる当て字なのだから意味なんて知るかか。現代人はよく何かに事欠いて、視界に入ってきた事柄に対してジャッジメントする。
まあ、現在では見かけないかな。そもそも文章中に「ああ」なんて言葉を忍ばせることさえやらなくなった。
ため息だらけで湯けむりになり、熱水噴出孔になり、温泉が湧きだし、SNSの街ができ、それで事件が起きているのだから、心中お察しする。

小説内で時折見かける台詞でもある。
あまり見かけないものだから、作成途中に挿入された作者独自の栞かな、と思ったりもする。作者と登場人物の心情がシンクロするのだ。
その際、一体何の模様だろう。栞の押し花の話である。
きっと栞だった紙に模様を付与する魔法のような、ひらがなの「ああ」は白紙だったのかな、って。
そんなことを思ったりする。

3/10/2025, 9:56:55 AM