椋 ーmukuー

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自称進学校。そんな事は入学するずっと前から知っていた事だった。この辺りの地区ではトップレベルの学力を誇っていて某有名大学への合格者も毎年それなりの量で出ている。

勉強がそんなに好きなわけでもないのにこんな学校に入ってしまった。後悔というよりは生半可な気持ちで周りの奴を蹴落とした事を申し訳なく思っている。自分の存在証明のために、肩書き1つを手に入れるために、自分は入学してしまった。でも、それは後に自分自身を苦しめる事になる。

「1日12時間以上の勉強なんて当たり前でしょ」

「え?習ってない?そんなの、予習していればわかるでしょ?」

「隙間時間は何してるの?勉強じゃない?そんな余裕もないのに……呆れた」

先生は顔色1つ変えずに何度も何度も洗脳するかのように言っていた。

周りには授業でさえも机の下でゲームに集中している奴、一軍を気取っている奴、大人しく身を潜めている奴…そんな奴らばかりが溢れていた。非常識な奴らでも授業の内容を理解してテストでは高得点を取る。気持ち悪くて仕方がない。生まれ持った才能とはこういう事なのか。努力はした。それでも下から数えた方がよっぽど早かった。だからまた努力して必死にしがみつこうとしている。それでも結果は変わらなかった。結果重視の世の中で、結果を残せない奴は軽蔑される。無駄じゃないって思える日が来るとも思えなくなった。ただただ無気力になっていく毎日。

「またこんな低い順位…兄にも姉にも勝てないなんてみっともない…もう少しまともになりなさい」

勝ち負けなんて……。
そんなくだらないものに今日も自分の人生は評価されている。

題材「勝ち負けなんて」

6/1/2025, 2:58:08 AM