「今日が、君と最後に会った日だよ」
何の前触れもなく、彼女が言った。
「どういう意味?」
「どういう意味でしょう?」
「質問に質問で返してくる人って嫌な感じだな」
「少しは自分で考えようという気がないのかね、君は」
彼女はソファに腰掛け、偉そうにふんぞり返っている。
「その一、今日が君と僕の今生の別れになる。その二、前回会ったのが今日と同じ日付だった。その三、特に意味はなく、思い付きで言ってみた」
ぱっと思い浮かぶ事をひとまず並べてみた。
「僕的に一番有力なのは、今のところ三番目だと思うのだけど」
「この私がそんな意味のない事をすると思うのかね?」
彼女はまるで長い髭を撫でるかのような仕草で、顎の辺りを触っている。
「否定してあげたいところだけど、悲しいかな、君なら十分有り得ると思う」
僕の言葉に、今度はぷくーっと頬を膨らませ、眉間に皺を寄せこちらを睨む。
「はいはい、正解は?」
軽くあしらって答えを促す。
「その一が半分正解。今日が君と私の今生の別れになった」
その言葉に、思わず僕の眉がぴくりと反応する。
「君は一度死んでいるんだよ」
6/26/2024, 10:48:08 PM