『――サエ?』
――つながった。
もう二度と、聞くことができないと思っていた声が。この電話から聞こえる。たしかにつながっている。
「……、……レイス……っ」
顔が熱くなる。目の前はあっというまに滲んで、涙が頬をつたっていく。
『サエ!? サエなんだな!?』
「うん、れいす、レイス……!」
これが夢でもいい。これが夢でも、もう忘れてしまったと思った声を、こうやって鮮明に思い出すことができたのだから。
レイス。レイス・マクレーン。マクレーン帝国の、第一王子。彼は、――ものがたりのなかの世界のひとだ。そしてその世界は、わたしが三年前に飛ばされた世界だった。
/はなればなれ
11/16/2023, 11:23:18 AM