誰かのためになるならば、を免罪符にしない。
誰かのためになる、を私の存在理由にしない。
「誰かのために」が悪いことではないんだけど、「誰かのせいで」と紙一重になる気がしてね。どうも苦手なんです。
……コーヒーを飲みながら目の前の女は話す。喫茶店に人はまばらで、こちらを見る人はいない。
ほら、私たちが動くと人間ってすぐ有難がったり、怖がったり、すがったりするでしょう? その逆もたくさんあって。
私たちが「助けていたのに何事だ」って言うのも、なんか違う気がするのよ。そういうのばっかり見てたら、疲れちゃって。
「本当に、お疲れさまです」
いいのよ。人間なのにわざわざこうやって話聞いてくれるだけで、私たち嬉しかっんだから。
女は立ち上がり、店を出るためにドアのほうに向かった。自動で開くはずのドアは開かず、女は“通過”して外に出た。
「本当に、そうですね。『誰かのために、という自分のため』くらいでいいと思います」
コーヒーは、飲みかけのままそこに置かれていた。
7/26/2023, 11:38:10 PM