300字小説
有償の愛
「貴方が居てくれれば何もいらない」
そう彼女は言ってくれた。初デートのフードコートも格安チェーン店も喜んでついてきてくれたし、誕生日に送った500円のおもちゃの指輪も涙を流して喜んでくれた。公園デートには毎回、手作りのお弁当を持ってきてくれ、俺の誕生日にはケーキや料理を作って祝い、数万円はする俺の趣味のものを惜しげも無くプレゼントしてくれた。
入籍して部屋に越してきた彼女が訊く。
「これで貴方は私のものになったのかしら?」
「ああ」
次の瞬間、喉に痛みが走る。
「一目見て好きになったの。貴方以外何もいらなくなるくらい。だって本当に美味しそうなんだもの」
いただきます。薄れる意識の中、彼女の笑い声が聞こえた。
お題「何もいらない」
4/20/2024, 11:47:05 AM