小絲さなこ

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「スカートを翻して」



「探検ごっこ」と称した遊び。
家と家の間の細い所を通り、塀を登って降りていく。
ビリッ。
嫌な音と感覚がしたから、着地してすぐにスカートの裾を確かめた。

「あーあ……やっちゃったぁ」
「どうしたの?」
「スカート破けたー……どうしよ……」
これは、確実に母に怒られるだろう。
六年生にもなって、近所の男の子たちに混じって探検ごっこなんてしているからだ、と。

「ダッセー」
「うるさいなぁ。もー、さいあくー!」
「ちょっと待って。僕、裁縫道具持ってる」
ひとつ年下の男子が手を挙げた。

「あー、でも糸、赤いのと青いのしかない……」
「いいよ。別に」

隅に移動し、借りた針と赤い糸でささっと縫う。これは応急処置だ。家でちゃんと縫い直せばいい。

「糸、今度返すから」
「いいって、そんなの」
「そう」
「うん」
「ありがと」




「……って、ことがあったなぁ……」
「もー、何年前の話」
「この子もお転婆になるんだろなぁ……」
「やめて……」

いまだに夫はあの時のことを持ち出す。



────赤い糸

6/30/2024, 2:42:58 PM