《君と見た虹》
これで、何度目だろうね。
君とこうして、街を後にするのは。
いままで、いくつもの街に出向いて、困っている人たちを助けようとしてきたね。
そして、その尽くが失敗に終わってしたった。
今回も、同じく。
はじめて行った赤い街は、争いが絶えない紛争地域だったね。
そこで、ぼくたちはその紛争を終わらせようと頑張ったね。
もうこれ以上、人々が血を流さないで済むように、すべての争いに決着を着けたね。
その結果、戦う兵士が誰一人いない、どころか街の人が誰一人もいなくなってしまったね。
次に訪れた街は、夕日のキレイなところだったね。
オレンジ色の夕焼けが、ずーっとずっと続いている、永遠に朝も夜も訪れない不思議な街だったね。
そこで、ぼくたちは人々に時間を与えてあげようとしたんだよね。
止まった街の時間を動かした結果、人々からは安らぎがなくなってしまったね。それこそ、夕日なんて見る暇もないくらいに。
すべてが黄金で飾られた、とてもお金持ちな街に行ったね。
堀で囲まれた街はどこをみてもピカピカで、だれもかれもがその内を飾ることに美を感じていたね。
そこで、ぼくたちはそのお金をつかって、生活を豊かにする工夫を提供したね。
結果、あの街はインフラの整備が整った途端、他の街からやってきた強盗に襲われて、跡形もなくなってしまったね。
緑豊かな街があったね。
山深いところにあって、草や花や動物たちが憩う癒しの空間が広がっていたね。
そこで、ぼくたちはそこの生き物たちが絶滅したりしないように、これからも大事に保護できるようにしたね。
すべての生き物を標本として保存した結果、生きている物はなにも無くなったね。
水の街といわれるところがあったね。
あらゆる所から水が湧きいでて、水運事業や温泉など、人々の楽しそうな暮らしがみてとれたね。
だから、ぼくたちは清潔な水がこれからも湧き続けるような手助けをしたね。
結果、微生物が滅菌されてたせいで死骸が分解されなくなって、街がゴミの海に沈んだね。
このあいだの街では、人々がみんなブルーな気持ちになっていたね。
毎日毎日、繰り返し繰り返しの退屈な日常に飽き飽きしていたね。
そこで、ぼくたちは彼らに生きていくのが前向きになるような娯楽を考えたね。
結果、誰もが夢中になって、誰も他の人のために労働しようとしなくなったね。
そして、今いるこの街は、ずーっと夜が明けないね。
いつまでたっても朝日を拝めない、ずーっとずっと暗い街。
だから、ぼくたちは少しばかりの灯を与えてあげたんだよね。
結果、街の人達みんなの目が灼けて、みんな明るさを感じられなくなったね。
やっぱり、それぞれの形にあったものは、一々手を加えないほうがいいのかもね。
2/23/2025, 6:56:03 AM