千歳緑

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星が溢れる

「何やってんの?」

 長男が帰ってきた時、リビングのテーブル上には星が溢れていた。
 いや、星型のりんごの芯だ。角の皿にはくり抜かれた輪切りのりんごが山積みだったから。

「あの、テレビ、やってて……カンタン、できるって…」

 三男が、散らかして怒られると思ったのかビクビクしていた。
 次男は、胸を張って言った。

「面白かった。止められなかった」

 反省はしていない。と続けそうだったので、その前にデコピンで止めた。

「あー…兄ちゃん、手伝おうとしてくれたのか」

 自分の番だと額を差し出す三男の、頭を撫でる。その様子を見て、次男が口を尖らせた。
 共働き、弟の食事を担当している長男は、母の言いつけで必ずりんごを切って別ける。栄養バランスを気にしてるのはわかるが、正直面倒くさいと愚痴っていたのを聞かれたらしい。
 次男が子ども用包丁とまな板を出して横向きにりんごを切り、三男はクッキー型で芯をくり抜く。
 きゃっきゃしながら箱一つぐらいを消化したのが目に浮かんだ。半月分はあったはずだ。というか、ウチにクッキー型なんてあったのか。

「……次やる時は一言いえ。やぶったらゲンコツ」

「…はい」「へーい」

「……。罰、もう一つ追加。パイシート買ってこい」

 アップルパイ作ってやる。と言うと二人揃って目をキラキラさせた。やっぱり反省していない。

「「行ってきまーす!」」

 勢いよく扉を開ける背中に「車に気をつけろよー」と声をかけながら、長男はテーブルの星々を片付け始めた。

 許せ母。夕飯が菓子になる。

3/15/2026, 1:07:41 PM