紗夢(シャム)

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【誰よりも、ずっと】【遠くの空へ】
【神様へ】【届かぬ想い】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

4/2 AM 8:45

「……朝なのに何を黄昏てるのよ」
「……よーす、寳(たから)」

 音楽室の窓の外の青空を見上げていた
 十詩希(としき)が、振り返って
 暗いトーンで朝の挨拶をしてくる。

「具合でも悪いの?」
「絶好調」

 誰よりも、ずっと、絶不調にしか見えない
 どんよりさで、何を言ってるのか。

「1週間ぶりの部活が億劫な訳?
 せっかく――」

 久しぶりに暁に会えるのに、と
 続けそうになった言葉は飲み込んだ。
 それでも、言わんとしたことが
 なんとなく伝わったみたいで。

「……半々なんだよな。
 会えるのが嬉しいって気持ちと、
 色々感情揺さぶられんのがしんどいって
 気持ちと。いっそ忘れさせてくれって
 願いたくなる時もある」

 遠くの空へ向けて――もしかしたら
 神様へ向けてなのかもしれない――
 十詩希が呟いた。

 どうせ届かぬ想いなら、忘れさせて。

 (……歌詞のワンフレーズじゃないんだから)

 そんなこと、願うだけ無駄なのに。
 だってきっと、一度忘れたところで、
 また同じように恋に落ちるだけ。
 嫌いになりたいと願えない時点で、
 十詩希は暁に甘く苦しめられる日々から
 逃れたくないと無意識では思っている。

 (やっぱり、不憫だわ)


【エイプリルフール】
【快晴】【春爛漫】【言葉にできない】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

4/1 AM 10:30

「大変! 宵ちゃん!
 お寿司と魅惑のラブゲームを繰り広げる
 恋愛シミュレーションゲームがリリース
 されるよ!」
「……はぁ?」
「わたしとしては、メインヒロインっぽい
 同級生の中トロちゃんと、
 クールビューティーなイカ先輩が
 気になるところ! ――あ、年下
 幼馴染みの玉子ちゃんもいいね」
「ちょっと何言ってるのか分からない」

 宵が本気で困惑した表情を見せると、
 暁は笑いながら自分のスマホを
 差し出した。

「これ見て。4月1日って色んな企業が
 エイプリルフール用の面白嘘サイト
 作ってくれて楽しいよね」
「ああ……そういうこと」

 そういえば今日から4月か、と思う。
 オレも宵も、季節の変化に暁の言動で
 気づくことが多い。
 
「嘘って言えば、子供の頃読んだ本で、
 日記にぶたが降ってくるって嘘を書いた
 つもりがほんとになっちゃった!
 みたいなお話なかった?」
「あったわね。はっきりは覚えてないけど」
「ぶたはさすがに大きいし危険だよねぇ。
 降ってくるなら、SPY×FAMILYの
 第2期オープニングみたいに、
 たくさんのお花だったりしたら
 素敵じゃない?」

 暁が言っているのは、楓が色とりどりの
 コスモスに変わって降ってくるシーンの
 ことだろう。

「……そうね。あんな風に花が降ってきたら
 確かに素敵かもしれないわ」
「でしょでしょ~? 今の時期で
 色が豊富なお花だと――」
「アネモネとかガーベラ辺りかしらね」
「いいね! 快晴の空から、お日様の
 光に照らされたアネモネとかが
 降り注いできたら、まさしく春爛漫!
 って感じで。
 ね、真夜(よる)くんはどう思う?」

 暁が言ったとおりの情景を想像してみる。
 降りしきる春の花を不思議そうに
 見上げる宵と、その隣で嬉しそうに
 はしゃいでいるだろう暁は――。

「言葉にできないくらい、綺麗だよ」

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 そろそろお題に追い付けそうかも。

4/16/2023, 3:15:39 PM