彼にとって最後の大会だった。高校生活の大半を費やしたバドミントン部の大会、結果は県大会の3回戦敗退。彼の目には大粒の涙が溢れた。支えてたなんておこがましい。私は彼のがんばっている姿を見て好きになっただけだ。でも彼は、試合に負けたすぐあとで、私に向かって「ありがとう」と言いながら泣き崩れた。
「泣かないで」なんて言えなかった。
次の休日、私たちは映画を見に行くことになった。彼の練習があるからデートなんて行ったことがなかった。彼もこれから受験勉強に本腰をいれるはず。もしかしたら、入試前、最初で最後のデートになるかもしれない。
映画は私が見たかった恋愛モノ。運命に翻弄されながら出逢いと別れを繰り返す男女のはかない恋物語だ。彼は興味ないだろうなと思いながらも、提案したら快く了承してくれた。「俺、この女優さん結構好きだし」という言葉にはムカついたけど。
上映時間が迫る。私たちはお決まりのポップコーンを真ん中に置いて、隣同士座席についた。ずっと部活で疲れてるだろうし、寝ちゃうかなとも思ったけど、彼は真剣に映画を見ていた。
クライマックスに向かい、映画は心揺さぶるシーンが続く。その中で彼は…。寝ててくれればまだよかった。
まさかこんなに、
周りが迷惑するぐらい号泣するとは…。
「あの、ねえ、ちょっと、私の隣で、大声で泣かないでもらえるかな…」
12/1/2024, 12:47:01 AM