玄関のドアを開けるなり、俺はそのままバタンと倒れ込んだ。
疲れた。とにかく疲れた。
冷たい床に頬をつけたまま放心していると、奥の方からパタパタと足音が聞こえてくる。
「おかえりー」
「……お前、また勝手に入ってたのかよ」
「合鍵持たしてくれてんだからいーじゃん」
まぁ、そうだけど。こんな頻繁に、つーかもうもはやほぼ毎日上がり込んでくるとは思わなかったよ。
社畜の俺と違って、気ままなニート生活を満喫しているハルトはいつものんびりしていてマイペースだ。激務に追われて1日があっという間に終わる俺とは大違い。
「……ま、別に羨ましくなんかないけどな」
「何ひとりごと言ってんの?早くご飯食べなよ。今日はチーズオムレツとシーザーサラダ、あとミルクスープも作っといたよ」
「マジか」
途端にむくりと起き上がる俺。言われてみれば、確かにダイニングの方からめちゃくちゃおいしそうな匂いが漂ってきている。
「……つーか、ほんとなんでお前、毎日俺ん家来て飯作ってくれるんだ?」
「んー?だってケンタ忙しくて大変そうだから」
「や、それはそうだけど……。こういうのって普通、彼女がやってくれるもんじゃないのかね……」
「まーまー、そう固いこと言うなって。ケンタだって、俺が作るご飯楽しみでしょ?」
「……」
否定はできない。
押し黙った俺を見て、ハルトが「ほら、早くご飯食べよ」とくしゃりと笑う。
こうして今日も、男2人の真夜中の晩餐が始まる。
1/26/2023, 12:40:29 PM