ひと目見たときからきれいな人だと思っていた。そんな彼女は、僕よりひとつ上の先輩だ。顔だって、スタイルだっていい。多分、一目惚れだった。先輩が動くたびに弾んで揺れる、指通りの良さそうな黒い髪が特に僕は好きだ。どんなさわり心地なんだろう。どんな香りがするんだろう。ある日、彼女の彼氏らしき男が彼女の頭を撫でているのを見かけた。あんなふうに気軽に触れ合う二人は、恋人に違いない。きっと毛先までさらさらなんだろうな。触れられないあの人の髪の感触を想像するしか出来ないことが、くやしかった。
「さらさら」
5/28/2025, 1:46:04 PM