汚水藻野

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「_____ははッ、なつかしいな」


夜も更けきった古い居酒屋で、先輩は笑った。
ああそういえば、とその笑顔で思い出す。


コイツは前世でもそうだったな、と。


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「_____、オレもう行くけど、お前どうする?」

「あー……どうすっかなぁ」

全てが終わって、世界が正しく回り始める頃。
完璧な平和とは言えないから、世界は美しいのだと再認識した。脳裏では鳥が木の上で囀り、兎が草原を駆け巡った。
それでも世界の端くれかどこかでは、何かを支配したくて泥沼に呑まれたり、何かを変えたくて一緒に飛び込む者がいる。
それを感じて、風に頬を撫でられながら世界を見つめた。

「どうしたいんだ?」

ふいに上から声がかかる。

これからどうしたいか、か。
そこまで考えてはいなかった。どうしようかな。

世界がまたもう一度綺麗に回るようになる前は、ただ目の前の問題から目を逸らせずにいた。先のことを考える暇なんてなかったし、それは私だけではなくコイツもそうだっただろう。

「決めてない」

とひとつ呟いた。

「そうか」

とだけコイツは言った。

「それならここでお別れかな」
「え」

あまりにもさらりとそう言うもんだから驚いた。こういうのって普通、熱く手でも繋いで「これからも共に!!」とか言って終わるものじゃないのか。自分の存在はコイツにとってその程度だったのか。
少し悲しくなりながら、もやもやと浮かんできたのは「確かにこのくらいの心持ちで別れた方が、自分たちらしいかもしれない」という気持ち。納得し始めてしまった。

「……そうだなあ」
「あのさ」
「あ?」
「オレお前がいなかったらこんな事してなかったと思うんだ」
「は?」
「だからありがとう」
「ん?」
「オレと出逢ってくれて」
「………………告白じゃん」
「ははッ、そうかもな」

「来世もし逢えたらさ」
「うん。……うん?」
「お前の古い方の名前、ちゃんと呼んでやるよ」
「何それ」

世界は美しい。世界にはたった2人だけ。
言葉の意味、そのままだった。


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「ヒビキ」
「え?」
「ヒビキだろ、お前」
「Oh……」

なんか見破られた。




2025.11.29.「失われた響き」

なんかすっげえノリで楽しく書いてたら長くなった。
書きたくなったら続きを書こうと思う。

以下オタクの戯言。
アニポケにやっとスグリさんが出ましたね??
ヒロアカ毎週泣いてるヨォ!!終わらないでヨォ!!
ハズビン終わっちゃったんですけどどうすれば良いですか?

11/29/2025, 11:36:22 AM