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あ、これ夢だな。


と、母に名前を呼ばれ、笑いかけられて気付いた。
辺りを見渡す。

自分の絵が飾られている展覧会。ついさっきまで
居心地の良かったこの空間が、作り物だと気付き、
脳の奥が急激に冷めて行くのを感じる。


自然と口角が下がる。気分は最悪。正面を見た。
偽物の母がこちらを心配している。偽物の母が。

母の笑顔なんてここ最近見ていない。
いや、違う。しばらく、母を見ていない。

直近の母との会話は半年前。
電話口から聞こえる母の泣き声と怒声。
大きな声に耳が痛かった。

目の前のこちらを窺う女に目を凝らす。
あの時から、母は私を名前で呼ばなくなった。

だから夢。


今日私がするべきことは、安いスーツを着て、
黒い髪を結い、薄っぺらい化粧をして、履歴書を
送った会社に足を運ぶことだ。


現実とは程遠いこの空間。ハリボテだと
分かってはいても、手放したくはなかった。


部屋の角が明るい。それに抗う術を、
今までも、これからも、私は持っていない。



ああ、嫌だな。
もうすぐ、夢が終わる。




/夢が醒める前に

3/20/2024, 10:38:59 AM