初心者太郎

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—右手首の赤—

『運命の赤い糸』の言い伝えがある。
運命の相手と見えない赤い糸で結ばれており、いつか必ず結ばれるというアレだ。

だが、私は小さい頃からその赤い糸が見えている。右手首に結ばれた赤い糸は伸びて、幼馴染のソウシの右手首と繋がっていた。

私は別の男子が好きだったし、年を重ねるごとに段々と赤色が薄くなっていったから、信じていなかった。


「待ち合わせは渋谷のハチ公前か」

今日はマッチングアプリで知り合った男性とご飯に行く。社会人になってから出会いは減り、いよいよ生涯独身の危機を感じたからアプリをインストールした。

渋谷駅の改札を抜けて、人混みを掻き分けて地上に出る。
赤い糸は次第に濃くなっていく。

「あっ、見つけた」彼の元に駆け寄る。「すみません、お待たせしました」
「えっ」彼は驚いた表情を見せた。「ミナじゃん」

私は目をよく凝らして見た。その顔は幼馴染のソウシだった。気が付かなかった。
不意に右手首を見ると、真っ赤に染まっていることに気がついた。

「おまえ、写真盛りすぎだろ」
「そういうあんたも人の事言えないでしょ」

本当にこんなやつと結ばれるのだろうか。
絶対にいやだ、と心の中で毒づいた。

お題:時を繋ぐ糸

11/27/2025, 3:43:31 AM