【だから、一人でいたい】
言葉にしなければ
誰かと出会わなければ
その内包した感情を知らずに済んだのに
震えた空気の振動で相手の中身が伝わってしまう
こんなにも簡単なことなのに
みんな素知らぬ顔をして毒を吐く
これが見えるのは
これを吸い込んでしまうのは
僕だけなのだろうか
僕も相手に毒を吐きかけてしまっているのだろうか
それならいっそ誰にも会わなければ良いのだ
何と最適な答えなのだろう
僕は深い深い海の底
ヒカリさえ届かない場所に自分を隠した
もう誰にも会わないように
何年の月日が経ったころか
どこか遠くで物音がする
僕を知るものはもう居ないはず
偶々、偶然迷い込んでしまったのだろう
だけどここは深い深い海の底
果たしてあの場所に帰れるのだろうか
ほんの少しの興味が
固く閉ざした扉の向こうに漏れ出てしまった
だからバレてしまったんだ
見つけた少女は目が合うと首をかしげて歌い始める
僕が隠してた僕のことを
まるで鏡に映したように
我に返って咄嗟に耳を隠した
僕の知らないような僕を歌うあの少女の
本当の音を知ってしまいたくなかった
そんな心配をよそに歌は続く
否が応でも聞こえてしまう届いてしまう
それなのにウソが1つも混ざっていない
なんて綺麗な音色なんだろう
僕は初めてきみの姿を捉えた
初めて自分の足で立ったような感覚がした
今までうまく息が吸えていなかったのにも気が付いてしまった
それくらいもう限界だったのだ
人に寄りかかることの罪がどれだけ重いか
潰される側の気持ちは身に余るほど知っているというのに
本当の言葉しか紡がないその歌声に頼って息を吸う
こんなにも相手の首を絞める事があるのだろうか
だから、一人でいたい。
あの時にその覚悟で閉じこもったのに
ああ、どうか歌っている間だけは
僕のそばに居て欲しいなんて
最低だ
2024-07-31
7/31/2024, 1:57:30 PM